アラン・デュカス、三國シェフなど。ガストロノミ―の真髄を学ぶ料理人の書籍4選
三國清三・著/『三流シェフ』
2022年に刊行された『三流シェフ』は、日本フレンチ界の重鎮・三國清三氏が自身の半生を赤裸々に語った一冊だ。
幼少期の貧困、『帝国ホテル』やフランスでの修業、開業時の苦闘、ミシュランガイドとの距離感、そして37年続けた『オテル・ドゥ・ミクニ』を閉店するまでの道のりが率直に記されている。困難な状況下でも店を続けるための判断や、閉店という大きな決断の背景は、多くの経営者の参考になるだろう。「三流」というタイトルには、常に一流を目指し続ける同氏の覚悟が込められているようだ。
三國氏は1954年北海道増毛町生まれ。『帝国ホテル』での見習いからスイス日本大使館勤務、フランス修業を経て、1985年に東京・四谷で『オテル・ドゥ・ミクニ』を開業した。政財界や文化人に愛された名店は、2022年末に閉店。その後、少人数制の新店舗構想を発表し、70歳を超えたいまも現役として挑戦を続けている。
小林寛司・著/『villa aida 自然から発想する料理』
2019年に刊行された『villa aida 自然から発想する料理』は、和歌山県岩出市のレストラン『villa aida(ヴィラ・アイーダ)』のオーナーシェフ、小林寛司氏の料理哲学と日々の営みをまとめた一冊だ。
自家農園で育てた300種以上の野菜やハーブを使った106皿を、春夏秋冬の章立てで紹介。生産者との交流や畑の風景も織り交ぜ、地方ガストロノミーの可能性を提示する内容になっている。畑と厨房を一体として捉えるその発想は、食材調達から差別化を図りたい経営者に、多くのヒントを与えてくれるだろう。
著者の小林氏は1973年和歌山県生まれ。大阪のイタリア料理店勤務を経て1994年にイタリアへ渡り、三つ星『ドン・アルフォンソ1890』でパスタ部門シェフを務めた。1998年に地元で『リストランテ・アイーダ』を開業、2007年に現在の『ヴィラ・アイーダ』としてリニューアル。『ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022』で二つ星とグリーンスターを獲得したほか、『アジアのベストレストラン50』では2022年、2023年と連続で14位にランクインするなど、世界的な評価を確立している。
4人のシェフによる著書はいずれも、料理の裏にある哲学や店づくりのヒントにあふれている。経営やメニュー開発に悩んだとき、ページを開けば新しい発想や一歩を踏み出すきっかけが見つかるかもしれない。
